「家庭科の特徴とその課題 −1990年以降の新聞記事と家庭科の教員養成課程専攻の男子学生のインタビュー調査から−」


【研究目的】
 家庭科専攻の学生の大半は女子であるが、平成13年度現在総計11名の男性も在籍している。しかし、世間では家庭科は女子の教科とみなされており、男子学生が在籍していること事態が珍しがられ、男子が選択すること自体に根強い抵抗がある。そうした抵抗にこうして入学した男子学生は、女子学生と異なった家庭科への思いがあると思われる。
 実は私自身、家庭科を選択に当たり、いくつかの科目を比較しながら家庭科にある種の期待を抱いて本専攻を選んだ。入学後様々な科目を学ぶ課程で、その期待は家庭科の持つ特徴の一部であり、もっと多様な特徴を家庭科は持っていることを感じ始め、また時として期待とのズレを感じ、家庭科に失望を抱くこともあった。つまり、「家庭科とは一体どのような教科であるか」という課題は、自分自身への問いでもある。
 以上の点を踏まえ、本研究ではその特徴・利点・問題点を整理し家庭科の特徴を明らかにすることを目的にした。

【調査方法】
・インタビュー調査 @調査者は被調査者と家庭科専攻の学生として同列の立場の物が、Aインタビューを2回行った。B質問項目は少数とし、C論点を整理した。
・新聞記事の分析 月刊雑誌「切り抜き速報 生活と科学版」の1990年から2002年までの記事を選択した。「家庭科」「男」をキーワードとしてそれらに関する記事を抜き出し、その中から読み取れる特徴を分析した。

【結果と考察】
・ 新聞記事の分析によれば90年代前半では男も学ぶ家庭科として注目が集まった時期と、後半の中身が問われる時期で2分されることがわかった。
・ 家庭科の特徴として、「実生活と結びつき、生活に役立つ教科」「より良い暮らしを追求する教科」「学習内容に広がりがあり、教師の幅の広さが問われる教科」であることが明らかになった。
・ 男子学生・男子教師らが語る家庭科観には、学校で受け入れられにくい教育領域を、家庭科で行えるという期待を含め、人間教育としての家庭科が浮き彫りになった。
・ 家事経験が豊かな男子学生が家庭科に親近感を抱いており、また高校での授業で意欲的な授業実践をしている家庭科の履修者が多かった。
・ 合格可能性から家庭科を選択する男子学生が少なからずいることも否めない。また、女子の教師も多い中で、男が脚光を浴びるというヒーロー性を期待していることも明らかになり、男子学生にもこうしたジェンダーバイアス観が根強く存在していた。